一般社団法人LIFE IS ROSEと西武池袋本店のコラボ企画『中東の歩き方。在住者がオススメするシリアと周辺国ツアー』オンライントークイベントより、株式会社 アレッポの石鹸 共同代表・太田昌興さんのインタビューをお送りします。MCはDAR AMAL 代表・カモチリナさんが務めました。
―カモチ:「アレッポの石鹸」の原料は本当にシンプルに作られていますね。
太田:オリーブ油と月桂樹(ローレル)の実からとれた油だけで作っています。オリーブオイルは皆さんよくご存知のように肌に対してすごく刺激が少ない。実はシリアが元々の原産地という説もあって。非常に古くからオリーブが栽培された地域なんです。それと月桂樹のオイル。これはトルコをシリアといった地中海沿岸の山岳地帯に自生しているもの。勝手に生えている実から採れる油ですね。
―特別に栽培しているわけではないんですね?
そうなんです。月桂樹の何がいいのかというと、非常に抗菌力が高いんですね。例えばニキビとか吹き出物を防いだりとか、体臭を抑えてくれるんですね。箪笥に入れて虫除けとしても使われているそうです。
―太田さんは「アレッポ石鹸」を20年以上使われてるんですよね。肌がもうツヤツヤされていて!ご自身で石鹸を使われていて気付いたことはありますか?
僕、元々肌がそんなに強くなかったんです。子供の頃は、幼児性アトピーだったし、大人になっても汗をかいたら湿疹が出たりとか、腕時計をするを痒くなったりとか、ゴムに反応して痒くなったとかしていたんですね。それがこの石鹸を使い続けて、一切なくなりました。肌にも環境にも優しい。生後1カ月ぐらいの赤ちゃんから、ご高齢の方までお使いいただける石鹸になっています。
―「アレッポ石鹸」のアレッポというのは、シリアの街の名前だそうですね。
シリアという国のなかにアレッポっていう古い街があって、だいたい4000年前から人が住み続けている都市だそうです。
―4000年!? すごい歴史ですね…
遺跡の上に人が住んでいるので、街全体が”世界遺産”という町ですね。同じシリアでも、ダマスカスという都市は1万年前から人が住み続けているそうです!シリアは至る所に遺跡がたくさんあって、見どころ満載なんです。
―初めてシリアを訪れたのはいつ頃でしょうか?
2003年ですね。「株式会社 アレッポの石鹸」での出張がきっかけです。会社そのものは1994年から始まっていて、僕は2000年に入社しました。この石鹸に惚れ込んだ先代達がとにかく売りたいということで、会社名も「株式会社 アレッポの石鹸」で、他には一切やらないんです。ちょっと不思議な会社ですよね。
当時はまさかシリアに関わると全然思ってなかったんですけれども、今は共同代表という形で関わることができて、こんな大切な商品も売っていることに凄く有り難さを感じているところですね。
―アレッポに入られた時は、シリアという国や「アレッポの石鹸」については御存じだったんですか?
いや、全然知らなかったです!
―どういった経緯で入社されたんですか?
先代社長から誘われたのがきっかけです。事業が忙しくなってきて「誰かいないか?」というタイミングでした。僕も一応やりたいこともあったんですけど、その社長がやたら面白い方で。一回決めたら絶対に折れない人だったので(笑) それで入社させていただきました。
当時は緊張しながらいっぱい失敗したんですよ。周囲からも「大変なのが入社しちゃったなぁ」なんて言われて。それで、一時期は大道芸人として修行に行かされたりなんかして…売り飛ばされそうになったこともありました(笑)
―もう何でも出来そうじゃないですか(笑)でも本当にご縁ですね。それからもう20年以上…!
まさか自分がアラビア語、英語が出来なきゃいけない業界に入るなんて…
―初めてシリアに行かれた最初の印象はいかがでしたか?
最初に訪れたのが2003年。ちょうどイラク戦争が始まって、米軍が制空権を制圧した時だったんですね。ちょうど僕、イスタンブールからダマスカスに入る飛行機だったんですけど、イスタンブールから飛行機が飛べないというトラブルがありました。やっとシリアに飛行機が飛ぶことになり、行ったみたらもう…すっごいエキゾチックなんですよ…!アラブの民族衣装を着た方が本当に街にいっぱいいて、全部がアラビア語で。あんまりアルファベット表記は見なかったですね。
イスラム圏にはアザーンというお祈りの時間の呼び掛けがあるんですけども、時刻になると何処もかしこも鳴り響いていて…!なんか凄いところだなという風に思いました。
―カルチャーショックみたなものはありましたか?
信号がなくて、車がブンブン飛ばしている中をみんな平気で歩いていくのがね…もう見ててドキドキでした(笑)あとは中野貴行さんのトークでも話に挙がりましたけど、皆さんすごく親切でしたね。本当に夜なんかも一人で歩いてても何も起きないし、平和な国だなっていう印象でした。人懐っこい性格で、本当に歓迎してくれる。来たらもう「泊まっていきな!」みたいな話になって。テレビではイラク戦争の映像が流れている中で、すぐ隣のシリアのすごく平和な雰囲気にギャップを感じましたね。
―やっぱり外からのイメージとギャップはありますよね。本当に行ってみないと分からない。
そんなアレッポも2016年あたりに爆撃を受けて、石鹸の工場がボロボロになってしまいました。工場のあった場所が、内戦で政府側と反政府側がせめぎ合っていた地点なので、非常に戦闘も激しかったところなんですけれどもね。現在は、みなさんが石鹸を購入してくださったお陰様もあって、修復が進んでいます。やっぱり現地の“当たり前の生活”を支えることが大事ですし、シリアの「石鹸」が文化的な象徴だと僕は思っているので、そういったものを守っていけている部分では良かったなと思いますね。
ゲストプロフィール:
太田 昌興 アレッポの石鹸共同代表取締役
2000年シリアの古都アレッポの特産品“アレッポの石鹸”を輸入販売する株式会社アレッポの石鹸に入社、以後毎日膨大な石鹸を通してシリアに触れる。5回のシリア渡航を経験。2011年以降はサダーカやJIM-NET等のシリア支援団体とともにシリア問題の周知とチャリティー販売など行う。30歳で同社入社し、以降5回のシリア渡航を経験。