一般社団法人LIFE IS ROSEと西武池袋本店のコラボ企画『五感で旅する世界旅行』オンライントークイベントより、下着ブランド「Rangorie(ランゴリー) 」を立ち上げた江副亮子さん 、綿石早希さんのインタビュー【前編】をお送りします。MCはアンジャリ(八尋美樹)さんが務めました。
―八尋:まずは、おふたりそれぞれインドとの出会いについて教えて下さい。
江副:今から約10年前、ある日突然、当時勤めていた株式会社リコーの電子掲示板に”インドの農村部に滞在して、現地のニーズを肌感で探ってくるメンバーを募集”っていうのが出たんですよね。もうそれを見て「これ、私です!!」って思って(笑) 応募して見事に通りまして、2度の渡航で計2ヶ月間滞在しました。現場では朝からいくつかテーマを決めて、例えば「教育の現場を見よう」と決めたら、学校に訪問したりしました。
―それはどういう目的でやってるものなんですか?
江副:BOPビジネスといって、まずBOPとは”ピラミッドの下層部(Base of the Pyramid)”つまり”所得の低い人達”のことを指すんですけど。BOPはピラミッド型のなかで一番面積の大きい”底辺部分”にあたり、世界人口に占める割合が大きい層です。視察メンバーがBOPの生活を体験して、その人たちが求めるサービス・モノが何かを調べることが目的でした。
―”大人の自由研究”ですね。
江副:その時にまず一番びっくりしたのが、村の中で男性と女性の立場がハッキリ分かれていたこと。男性は働く人で、女性は家のことをやる人。村の人をたくさん集めても、男性が座ってたら、女性は一緒に肩を並べて座れないとか。それにすごい衝撃を受けてしまって…私、女子高出身なんですよね。女子高って男性を意識しないので。村の女性側にインタビューしてみると『男女で役割分担が決まっている』『私たちもお金を稼ぐ仕事をしたい』っていう話がいっぱい聞こえてきて。そこで「女性に仕事を作りたい!」って強く思いました。
―インドの教育水準って高くなってきていて。女性でも英語が流暢だったり、非常に優秀な成績を収めている人もすごく多いんです。せっかく外へ行って勉強できるのに、農村では外で活躍してく機会ってあんまり無かったってことですよね?
江副:やっぱり結婚すると旦那さんのお家に暮らすことになるので、色々やりたいことはあるけれども、旦那さんが出稼ぎするから家の中にいることになります。それ自体が”良い・悪い”とか”好き・嫌い”ってことだけではなくて、やっぱり”お金を稼いだ人がこの一家を支えてる”という考えが家族の中に生じてしまうので。それが生まれた時から”男の子=家にお金をもたらしてくれる存在”で、”女の子=結婚する時にお金がかかり、そのまま外に出て行ってしまう存在”というのが根底にあるのを肌で感じました。
―「女性に仕事を作りたい!」という想いが、下着につながるんですね。
江副:インドの女性ってすごいお洒落で、農作業する時にもアクセサリーを付けていたりするんです。私、あんまりおしゃれじゃないから、インドの女性たちに結構怒られてて(笑)インドの女性にとって自分を綺麗にする事は”基本”であるという事を教えてもらいました。でもよく見ると、すごい綺麗な衣装を着ているのに、ちょっと残念な感じの下着が見えてたりとか。明らかにサイズとかみんな合ってないよな?って思うことが多くて。
―外を綺麗にしている割には、中が若干残念だった訳ですか。
江副:そこから下着に着目しました。インドには仕立て屋さん文化があるので、縫製ができる女性はいっぱいいるんですよね。ただ、下着は外国から輸入することが多い文化でもあったんです。そこで「現地で下着を作ったら今までと違うビジネスが作れるんじゃないか?」ってピーンときて。女性たちの仕事をつくる為にも「私、インドで下着を作りたい!」って思ったんです。
―そこから色々なことがあって、ブランドづくりに着手されたということですね。
江副:下着のブランドをやる前に、まずインドの下着屋さんに行ってみたら、おじちゃんが出てきたんですね(笑)そのおじちゃんから「どんな下着が良いの?サイズは?」って聞かれて…そんなこと言えないよねって。まずは”女性用品を女性が売るお店”を立ち上げることにしまして、これが最初の店舗ですね。
―そのプロジェクトが成功して、その後「Rangorie(ランゴリー) 」というブランドが生まれるにあたり、縁があって綿石さんと出会うわけですが、綿石さんとはどういう繋がりで出会ったんですか?
綿石:インドについては江副さんを通して知ったかたちでした。プライベートの会話でふと「そういえばインドに行ってましたよね?」と言ったら『実は私、下着のプロジェクトがやりたかったんだよね』っていう話をされたんです。私は昔おじいちゃん・おばあちゃんに育ててもらっていて、たくさん愛されて育ったんですけど、昭和1桁生まれのおじいちゃん・おばあちゃんだったので、マインドセットが先ほどのインドに近いと言うか…
―保守的だったんですね。
綿石:そうです。”男は男らしく、女は女らしくいなさい”とハッキリ区別されて育って。そこから社会人としてバリバリ働いて、いろんな人をお話していくうちに、その保守的な考え方が自分を苦しめていたんだなって気づいたんです。そこから自分も開放されたいし、苦しんでなかなか自分の殻を破れない人を開放したいなって思うようになったんです。
綿石:もともとは画像認識の技術を使ってカラダのデータをスキャンして、一人ひとりの体にあった服とか靴とか下着とかを作れないかと考えていました。
―3Dプリンターみたいなものですね?
綿石:そうです。ただ当時はアイデアとしてはあるんですけど、それを実際どういう風に進めようかなって思うと、日本の中で考えるとなかなか普及していかないなぁ…と考えていて。悶々としていた時に、江副さんから『実は私、下着のプロジェクトがやりたかったんだよね』っていう話を聞いて「やりましょう!」という話になったんです。
―なるほど。それが「Rangorie(ランゴリー) 」というブランドの基礎につながったと。これはリコーさんの社内プロジェクトとして始まったんですよね?
綿石:そうです。タイミングもすごく良くて、先程”大人の自由研究”というワードが出ていたんですけど、ずーっと”大人の自由研究”を続けている会社で(笑)
―素晴らしいですね!(笑)
綿石:「TRIBUS(トライバス)」という社内外含めた”新規事業創出プログラム”がありまして。ビジネスアイデアを募って事業化していくプログラムに私達も応募してみようということになりまして。
―そして見事に選考で選ばれて「Rangorie(ランゴリー) 」というブランドがスタートした訳ですね。そのニュースを私もオンラインニュースで見まして、「なんかすごいことやってる女子たちがいる!すごい!すごい!すごい!」ってTwitterで騒いでましたら、フォローしてくださってる方が『私の高校の同級生です!』と言ってくださって。その後お会いして「なんて素晴らしいことをやってる人がいるんだろう!」って思ったのが私達の出会いだったんですよね。
江副:インドを通して繋がりますよね。
🇮🇳Rangorie(ランゴリー) とは
美しいインドの伝統柄をあしらった女性用下着の製造、販売を手がけるブランド。
着る人に…デザインと着心地の良い物を身に着けることで生まれる幸福感、手入れの煩わしさや気温の変化に伴う不快感からの解放、これらを通して、着る人の能力を最大限引き出す物を提供します。
作る人に… 大きな能力を持ちながらも、それを発揮できる場所や機会の少ない人にこの商品の生産を依頼し、能力を発揮する機会を作ります。
※記事はコロナ禍に実施されたトークイベントの情報をもとに制作しています。
※2024年1月29日よりRangorie(ランゴリー) は、事業の更なる成長のため合同会社For DiLにブランド譲渡されました。